訪問美容を行ううえで心配なのが「事故やトラブルがあったらどうしよう!?」ということ。お客様にけがをさせてしまった、物を壊すなど損害を与えてしまった、そんな時はお詫びをするだけでは済みません。損害賠償責任が発生します。
私も訪問美容を始める前に一番気がかりだったのが、トラブルがあった時の責任をどうやって負えばいいんだろう?何を頼ればいいんだろう?ということ。自分で全てを解決できる自信がない・・・。
まだ始めてもいないのに、悪いことばかりを考えて躊躇して踏み出せずにいました。
そんなもしものために損害保険に加入しておけば、心強い味方になるはず。
実際、保険に加入していることを安心ポイントとしてお客様に宣伝している事業所も多いです。今回は損害保険についてまとめてみました!
訪問美容で考えられる事故
サロンのように整った環境の中でも、ついうっかり薬剤を落として床を汚したり、物にあたって壊してしまうことがありますよね。
訪問美容はお客様の生活環境の中での作業なので、まわりには多くの物が置かれていて、慣れない場所ということもあり、汚したり壊したりしてしまう可能性が高くなります。
また、高齢者の肌は弱く、皮膚がたるみ、免疫力も弱くなる為、ちょっとしたことで切れたり痣が出来たり、炎症を起こしてしまうということも考えられます。
中には椅子にどしんと座っただけで骨折してしまうという方もいらっしゃいます。
補聴器は、高額だと50万円~100万円程の物があります。そんな物を水に濡らしてしまった、落として壊してしまった場合は大変です。
それ以外にも、お客様が急に予想のつかない行動を取ったり、自由に身動きがとれないことにより起こってしまう事故も考えられます。
訪問美容で考えられるトラブルをいくつかあげていくと
・お客様が突然動き、耳を切ってしまった
・カラー剤でお客様の頭皮がただれてしまった
・衣類を汚してしまった
・メガネや補聴器をお預かりしたら、落として壊れてしまった
・シャンプー器具の設置中に壁に傷をつけてしまった
・お部屋のスペースを確保しようとテーブルを移動したら他の物に当たり壊れてしまった
・シャンプーする為に移動する途中で、お客様が転んでしまい怪我をした
・シャンプー時に手がすべって、お湯が近くの物にかかり濡らしてしまった
・カラー剤が落ちて床について汚してしまった
考えるときりがありませんが、賠償責任が生じるものであればきちんと対応する必要があります。
※お客様のお宅への行き帰りの車の事故等は「自動車保険」での対応になりますので今回は除外します。
目次
保険の選び方
訪問美容向けの商品はまだまだ数が少なく、掛け金や補償内容にもかなり差があるのが現状です。
実際に問い合わせてみないと分からない事も多く、「いったいどれを選べばいいの?」って迷われる方が多いかと思います。
保険を選ぶ基準としては、毎月の掛け金だけではなく補償内容がしっかり「不安」をカバーできているものかどうかをしっかり見ておく必要があります。
先ほどの「訪問美容で考えられる事故」の例を参考に、その事例が補償対象となっているかどうか、補償対象でない場合は「自分で責任を取れる金額であるかどうか」を基準に考え、保険選びをしましょう。
例えば「衣服を汚してしまった」場合のクリーニング代であれば責任を取れるけど、「お客様が移動途中で転んで怪我をした」場合の治療費は払えるか不安。
「床の汚れや壁につけてしまった傷」は高額になってしまうかもしれないという不安。
「施術中の事故」でないと補償がおりない保険もあるし、器具の搬入時などの事故でも大丈夫という保険もあります。訪問美容には必要のない(サロン向けの)補償ばかりをつけて高額の保険もありますので、実際に自分に起こりうるトラブルを想定しながら選ぶのがポイントになります。
もちろんお客様に言われるがままにお支払いする訳ではなく、正当に判断し交渉する事も必要で、そのサポート・相談役になってくれるかどうかということも重要です。
ではいくつかの保険を紹介していきます。
訪問美容向けの保険
全日本美容業生活衛生同業組合連合会(全美連)
すでにサロンを経営し、美容組合に加入されている方はこちらの保険も加入されていますか?サロン向けの保険ですが、訪問美容でも補償の対象となります。
全美連の保険が年間1600円で加入することができます。また、ハートフル美容師養成研修などに参加する事も出来ます。
こちらの保険は「疾病その他の理由により、美容所に来ることができない者」「社会福祉施設入所者」のみ補償対象となります。また、補償内容も「施術中の事故」のみの補償対象となります。
(ビューティーガレージ)サロン保険net.
こちらは訪問美容に対応している商品がありますが、実績がない新規出店の場合の契約は開店後1年経過しないと加入できません。
保険内容が改訂され、申し込み後すぐに加入できるようになりました。
実際に問い合わせしてみましたが、保険料は施術する人の人数で決定されるようです。
私は1人で訪問美容を行っていますがその場合の保険料は年間6960円。1か月あたり580円で加入できるので、個人で訪問理美容を行う理美容師さんには入りやすいお値段ですね。
補償額は1億円までですが、「施術中の事故」でないといけないそうです。
「施術中にお客様の耳を切ってしまった」「カラー剤でお客様のお洋服を汚してしまった」などです。
施術中でないといけないので、「移動式シャンプー台の搬入時に壁にぶつかって傷をつけた」「車椅子の移乗時に転んで怪我をした」など、施術外の事故は対象になりません。
さらに、オプションを付けると特約事項を追加することができるようになりました。
①漏水補償特約・・・持ち込みのシャンプー台を利用しての水のトラブルに対応できます。ただし「水管のないもの(ベッド上でペットボトルを利用したシャンプーなど)」は補償外となります。
②管理財物損壊補償特約・・・荷物を搬入・搬出時でのトラブル(お客様の財物を壊してしまった、床や壁を傷つけた等)に対応できます。
こちらは両方のオプションを年間70円で付けることができますので、特約を付けても年間7010円(1ヶ月あたり584円)になります。
上記の保険料は、私のように「1人で店舗を持たずに訪問美容を行っている人の場合」の料金になりますので、店舗をお持ちの方、または2人以上で活動される方はまた別途お問い合わせ下さい。
NPO ビューティーライフ
NPO ビューティーライフは福祉美容の講習を受け、「登録美容師」となることで保険に加入することができるものです。これから講習も受けたい、保険以外のサポートもして欲しいという方に向いています。
山野学苑の4日間の講習「福祉理美容師 養成コース(38000円)」を受講すると、コース修了後に福祉美容師の認定証をもらえます(認定料5000円)
その後「登録美容師」となることでNPO保険に加入することが出来ます。
<補償対象>
・お客様に対する怪我、衣類の損傷、器具で壁などを傷つけた場合、徒歩・バイクなどでの移動中の事故、車いすで移動の際に発生した事故(介護の資格保持者)など
こちらの補償対象は幅広く、訪問美容師さんにとってとても安心できる補償内容になっています。
JVPA一般財団法人 日本訪問理美容推進協会
JVPA一般財団法人 日本訪問理美容推進協会の会員となることで保険に加入することができます。
月額6000円(一般会員)程度で加入できるのですが、NPOの損害賠償保険に加入出来る以外にも
・ヘアメイクセラピスト養成講座を何回でも受講できる
・名刺、チラシなどの販促ツールが使える
・オンラインサロンで介護や訪問理美容の情報が共有できる
・ヘアメイクセラピストの認定ライセンスが取得できる
など、盛りだくさんの内容になっています。
保険にも加入したい、講習も受けたい、講習後もサポートして欲しいという方にはぴったりの保険ではないでしょうか?
くわしくは下のリンクをクリック
ヘアメイクセラピスト養成講座についてはこちらの記事でも紹介しています。
もし事故が起こってしまったら?
お客様に怪我や身体上のトラブルが起きた場合
お客様に病院に行って頂きます。(できるだけ同行しましょう)お客様自身も動揺しているので、冷静に対応できるように心がけましょう。
もしお客様から示談金を要求されても、絶対に現金は支払わないでください。
事故後はなるべく早い段階で見舞いの品を持参し、お客様の怪我の状況を伺ったあと、今後についての話し合いをしましょう。
お客様の物品を壊してしまった場合
損害状況を確認し、美容師側に不注意があったかどうかを改めて確認しましょう。
その場でお客様との示談交渉はせず、保険会社等へ連絡してアドバイスを受けて下さい。壊れた物品は証拠となるので、写真を撮り保管しておきましょう。
・小さな事故でも保険会社等へ報告し、アドバイスを受ける。
・安易に全責任を認める発言はしないこと。
・その場で示談交渉をしないこと。
事故を起こさない為に
事故というのは予想しない時に起こるものですが、対策をとることでリスクを減らすことができます。
・37度以上の発熱がある場合は、お客様が「大丈夫」と言われても施術しない。
・事前にパッチテストをする
・前回のカラーやパーマ歴、過去にかぶれ等はないか、お客様の体調や頭皮チェック等、カウンセリングを丁寧にする。ご家族や介護者にも事前に聞いておく。
・カラー剤などで汚さないように広めにシートをひいて施術する
・家具を移動しなければならない時はひとりでは無理そうな大きさならば、多少手がかかってもご家族にお手伝いをお願いする(無理しない)
・お客様の頭皮の状態や体調が悪ければその日の施術はやめる
・じっと座っていられないお客様には介護者に付き添ってもらう。移乗や体勢を変える際も介護者にお願いする。
など起こりうるトラブルを想定し、なるべく起こらないように対策をしていきましょう。
まとめ
上で紹介した保険の特徴を最後にまとめますね。
全美連美容組合会員費+1600円
・美容組合に加入する必要がある
・施術中の事故でないと対象にならない
サロン保険.net7010円(特約付き)
・個人には加入しやすい金額
・施術中の事故でないと対象にならない
ビューティーライフ・ビューティーライフは福祉美容の講習を受け、「登録美容師」となることで保険に加入できる。(料金不明)
・認定証やその他サポートも受けられる。
・施術中でなくても、移動や移乗時の事故、徒歩やバイクなどでの移動中の事故でも対象になります。
ヘアメイクセラピスト月額6000円(一般会員)
・ヘアメイクセラピストの会員になることで保険に加入できる。
・認定証やサポートも受けられる。
・施術中でなくても、移動や移乗時など「訪問美容を行うのに付随する事故」であれば対象になります。
大切なお客様にもしもの事故があったときには、なるべく十分な治療費をお支払いしたいと思うものです。
「もしものために」損害保険に加入しておいたほうが安心して対応することができますね。今回紹介した保険で検討したいものがあれば、まずは資料請求をしてみましょう。
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